ポルシェが挑む次世代バッテリー開発:急速充電と長寿命、安全性を両立する設計と試験

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ポルシェのEV用先進バッテリー技術を詳しく解説。急速充電320kW、18分充電、耐久15年/30万kmを目標に、温度管理とSoH最適化、厳格な試験、タイカンの改良、安全システムまで網羅。冷却プレート10kW、バスバー刷新、放電電流1100A、浸漬・腐食・クラッシュ試験、事故時遮断と動的放電など、長寿命と信頼性を両立。

先進バッテリー技術に取り組むポルシェの研究は、開発プロセスがいかに広範かつ多層化しているかを物語る。同社は高電圧システムの耐久性を内燃エンジン並みに引き上げ、少なくとも15年、走行およそ30万キロを目標に据える。この高いハードルに対し、緻密なエンジニアリング改良と賢い充電マネジメント、そして徹底した試験で攻める姿勢だ。目標設定の明確さは、電動化に対する同社の腰の据わった構えを感じさせる。

リチウムイオン電池の初期数カ月には、避けられない「初期劣化」による容量低下が1~5%程度生じる。ポルシェはあらかじめ予備のエネルギーを持たせる設計でこの影響を吸収し、以降の健全性(SoH)の低下を緩やかにする。温度、充電率、使い方の癖は老化に直結するため、内部反応ができるだけ安定する環境を保つことに注力している。

長時間の駐車時は、温度30度未満、充電率90%以下が最適だと確認されている。特許取得の急速充電技術は、熱と電気の振る舞いを制御してこの状態を保ちやすくする。セル内部でのリチウムの挙動理解も鍵で、充放電のたびに粒子は膨張と収縮を繰り返す。酷使すれば亀裂や材料損失を招き、劣化が加速するという。

急速充電を語るとき、開発陣はしばしば比喩で説明する。エンジニアのカルロス・アルベルト・コルドバ・ティネオは、席数の限られたレストランに客を案内するようなものだと例えることがある。温度やバッテリーの経年、充電率といった条件次第で、リチウムをどれだけ効率よくアノードに“入店”させられるかが変わるという見立てだ。

長期信頼性を担保するため、ポルシェは厳格な試験プログラムで電池を鍛える。セルは数万回規模の模擬サイクルをこなし、最高摂氏100度に達する温度や、ハードな走行を再現したストレスプロファイルに晒される。さらにシステムレベルの試験で、高電圧コンポーネントが専用ベンチ上で問題なく協調動作するかを確かめる。実験室だけでなくシステム全体で詰めているあたりに、同社らしい堅実さがにじむ。

タイカンでは、こうした開発がすでに成果を生んでいる。セル化学の改良で内部抵抗が下がり、冷却プレートの容量は6キロワットから10キロワットへ拡大。新設計のバスバーは電流の流れを改善し、総バッテリー容量が増えたにもかかわらず、急速充電時間は21.5分から18分へ短縮された。充電出力は最大320キロワットに達する。

走りの面でも恩恵がある。放電電流を1,100アンペアまで引き上げたことで、加速はより素早く、力強くなる。電池重量のわずかな削減も、切れ味のよいハンドリングに寄与する。数値の裏付けが走りの感触に直結している点は評価したい。

安全性は最優先事項だ。試験には、水深約1メートルに沈めた後も密閉性を保てるかを確かめる浸漬テストが含まれる。さまざまな濃度の塩水に晒す腐食試験や、深刻な衝突を想定したクラッシュテストも行う。ヴァイザッハ施設での側面衝突試験では、高電圧バッテリーにほとんど変形が見られなかったという。

安全システムには、危険なストレスを検知するセンサーを組み込む。衝突を検出すると電動パワートレインと補機を自動で遮断し、残留エネルギーを動的に放電して感電リスクを抑える。

ポルシェの哲学は明快だ。急速充電、パフォーマンス、安全性、そして長寿命のあいだで妥協しない。各コンポーネントは、日常の使用で想定される負荷をはるかに上回る条件に耐えるよう設計されている。だからこそ、電動化に信頼性と能力、長期的なたくましさを求めるドライバーの期待に応えられる、というわけだ。

Mark Havelin

2025, 12月 10 03:55