ルーシッド・エア ツーリング徹底レビュー:デュアルモーターAWDの走りと実用性

ルーシッド・エア ツーリング試乗記:2026年モデル、空力と足まわりが光る本命EVの実力・価格・効率
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ルーシッド・エア ツーリングを試乗評価。620hpのデュアルモーターAWD、空力と足まわり、強力ブレーキ、上質内装とUIの癖、航続と電費、19/20インチの影響、価格の妥当性まで本音で検証。さらに92kWhバッテリーの効率、静粛なキャビンと23基のカメラ、リジェン設定の好み、$79,000からの価格感もチェック。

Lucid Air は、単なる“走るガジェット”ではなく、工学そのもので評価してほしいと語りかけてくる電動セダンだ。ハイパフォーマンスEV開発で培った同社の素性は、加速の伸びやかさ、ラインに乗せたときの安定、そして道から難題を突き付けられても破綻しない落ち着きに表れている。

2026年の主役は、より手の届きやすい位置づけながら中身は本気のルーシッド・エア・ツーリング。前後に1基ずつのデュアルモーターを積む全輪駆動で、両者は機械的に分離(プロペラシャフトはなし)。各車軸にディファレンシャルを備え、駆動モジュールは7:1のシングルスピード減速機を用いる。システム総出力は620 hp、トルクは885 lb-ftとされ、最上位グレードの派手さがなくても本気で速い理由がここにある。

このクルマを数字のゲーム以上におもしろくしているのは、空力とパッケージングへの執着だ。アンダーボディはまるでデザイン言語のように処理され、大型リヤディフューザーや後方へ気流を導くフィン、そして従来の柔らかい遮音パネルではなく、要所に剛性の高いカバーや繊維素材を配している。さらに、ステンレス製ブレーキホース(メッシュ)を純正採用し、正規のジャッキポイントを備えるなど、静かな自信を感じさせる仕立ても目に入る。

ルーシッド・エア
Lucid Air / lucidmotors.com

ツーリングは決して“簡素版”の車体ではない。リヤはオールアルミのマルチリンクにアダプティブ・ビルシュタインダンパーとアルミ製ナックル、フロントも同じくオールアルミのダブルウィッシュボーンにアダプティブ・ビルシュタインという構成だ。スタビライザーも堂々としており、フロントは約32 mm、リヤはおおよそ20 mm(正確さは目測レベルだが狙いは明快)。ステアリングは電動アシストのラック&ピニオンで、センター付近のステア比は13:1、ロック・トゥ・ロックは2.3回転、回転円は約40フィートとされる。

とはいえ、エア・ツーリングが重い事実は変わらない。ここで扱っている仕様で約5,090 lb。バッテリーは18モジュールで構成される92 kWhのパックだ。それでも日常域では重量を上手に隠しきる印象で、重さを“感じ切る”にはサーキットに持ち込むくらい攻めないといけないのではと思わされる。今回の足まわりでもタイヤ幅は極端ではなく、オプションの20インチにミシュラン・パイロット・スポーツEVを履き、前245、後265を組み合わせている。

ブレーキは控えめとは対極だ。フロントは6ポットキャリパーに巨大な380 mm(15インチ)ローター、リヤは4ポットに375 mm(14.8インチ)ローター。回生ブレーキは摩擦ブレーキと併走し、ペダルを踏み始めた瞬間の初期制動は驚くほど立ち上がりが速い。ただし減速が進むにつれ、さすがに車重の存在感は前面に出てくる。

ルーシッド・エア
Lucid Air / lucidmotors.com

室内は多様な素材を織り交ぜた上質な空気感に、収納と空間設計の意図がしっかり通っている。ツーリングのフロントシートはホールド性が高く、ヒーター、ベンチレーション、マッサージまで備わる。その出来は出会った中でも屈指と評されるレベルだ。一方で、細かな調整の多くがセンターの画面内にあり、シートの微調整やステアリング位置の変更もタッチ操作に委ねられる。現代的ではあるが、ちょっと姿勢を直したいだけの時にワンアクション多いと感じることもある。

後席はしっかりした足元空間に、空調やシートを操作できる専用の小型画面、シートヒーター、サンシェードを備える。ガラスルーフは開放感をもたらし、どこかコクピット的な雰囲気すら演出する。なお、大きなルーフ開口部を省いた構成に触れる記述もあり、暑い地域では有効とされる。使い勝手の良さは荷室にも及び、後ろは大容量に加えて小物スペースや床下収納を用意。フロントトランクもたっぷりで、別所ではルーシッド公称の容量が283リットルと紹介されている。

そして“スマートプロダクト”ならではのいら立ちも顔を出す。満充電時の残走行距離を素直に表示しない点はその代表で、%表示は容易でも、実距離の算段は運転者に委ねられてしまう。基本機能がメニュー階層に依存する場面もあり、その場で電費の暗算を楽しめる人ばかりではないのに、ややエンジニア目線に最適化し過ぎた印象を受ける。

ルーシッド・エア
Lucid Air / lucidmotors.com

全体像としての気になる点はさらに具体的だ。穏やかな設定や完全なコーストを欠いた回生ブレーキの制御、好みの設定を組み合わせて保存できないドライブモード、汚れが付きやすいリヤカメラの配置、ダッシュボードの映り込みや操作系のリーチといった小さな人間工学上のわずらわしさ。対して美点は、二重ガラスも助ける非常に静かなキャビンと、豊富なカメラ群だ。ある記述ではカメラは23基とされ、周囲の状況をゲームのように可視化できるとされている。

航続距離については夢を見ない方がいい——結局は走らせ方次第だ。強めに踏めば電費はおよそ2 miles/kWhまで落ち得るし、丁寧に扱えば4 miles/kWhを超えることもある。ただしその高効率は、空調やオーディオといった装備の使用を抑える前提に紐づく。ホイール径の影響も大きく、最大航続を狙うなら19インチが賢明で、20インチにすると目に見えて削られる場合がある。

ルーシッド・エア
Lucid Air / lucidmotors.com

価格と価値は最もシビアな評価軸だ。米国ではツーリングのベース価格が$79,000とされるが、オプションを積み上げるとあっさりと$100,000を超え、その“$20,000ぶん”の実質が明確とは言い切れない。欧州ではさらに高価で、エントリーでも£150,000超、高性能版では£190,000超という言及もある。結論はどこか割り切れない。速さも技術も本物だが、強力な選択肢が並ぶ市場で、日常という土俵における価値を証明する必要がある。

控えめに予測するなら、難しい部分——説得力あるプラットフォームと記憶に残る走り——はすでに手にしている。次の一手は華やかさとは無縁だ。自己主張の強いインターフェースを整理し、日々触れる小さな接点を磨き、より手頃なモデルでも同じ芯を届けられることを示すこと。そこまでできれば、評価はさらに揺るぎないものになるはずだ。

Ethan Rowden

2025, 12月 29 10:45